20代企業研究者のブログ

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研究開発効率指標でタイムラグを考慮する

概要

  • 以前の記事で,企業の研究開発効率を評価したが,研究開発→成果までのタイムラグの考慮が課題だった
  • 研究開発投資→成果までのタイムラグを考慮した評価尺度を紹介している記事を見つけた
  • 例えば(過去4年間の累積営業利益)/(8年前から6年前までの累積研究開発費)という尺度で評価できるとわかった

タイムラグを考慮した研究開発効率指標が欲しかった

以前の記事では,研究開発効率の高い企業を知りたいと思い,記事を書きました.
kigyo-researcher.hatenablog.com
上の記事では,私の思いつきで考案した尺度として,(研究開発効率)=(取得特許数)/(研究開発費)を採用しました.
自動車ではトヨタマツダ,携帯電話通信ではauの研究開発効率が良さそう,という結論が一応出ました.
一方で,ある年の取得特許は,それより何年か前の研究開発費を元に生み出されたということに注意が必要です.
例えば,今年から研究開発投資を増加させたある企業の研究開発が上手く進んでいたとします.しかし,今年すぐには特許は取得できないので,上記の指標では,研究開発効率の悪い企業,という評価になってしまいます.
研究開発投資→成果までのタイムラグを考慮した研究開発効率尺度がより適切だと考えられます.

(研究開発効率)=(累積営業利益)/(それより前の累積研究開発費)

調べてみると,みずほ総研のリポート [1] にいい記述が見つかりました.
[1] https://www.mizuho-ri.co.jp/publication/research/pdf/report/report10-0929.pdf

[1] では,タイムラグを考慮した研究開発効率の指標の代表例として,[2] の

  • 「5年間の累積営業利益」/「その前5年間の累積研究開発費」

という尺度が紹介されています.
[2] CiNii 論文 -  危機意識から生まれたイノベーション・マネージメント ("雇用創出"その時企業は・・・)

さらに,[1]ではこの尺度を一部変更して使用しています.2005年の経産省の調査から,

  • 研究開発の平均期間:2.9年
  • 市場投入までの平均期間:1.2年
  • 収益計上期間の平均:4.1年

を採用し,下記の尺度を使用しています.
-「過去4年間の累積営業利益」/「8年前から6年前までの累積研究開発費」
上場企業であれば,営業利益は決算書に記載がありますので,この尺度を使用することができます.

この尺度を採用すると,例えば下記のような可視化ができます.
f:id:kkkxxxkkxxkx:20170329234150p:plain

(前回の自分の記事とそっくりな図が見つかったのでびっくりしてます.)

今後の課題

  • 上記尺度で,前回記事の各社の研究開発効率を可視化する.
  • 尺度の知見を最新化する.[1] は2010年,[2]は2000年の発表であることを考慮して,より新しい知見が発表されていないか確認する.

執筆時間:47分