ビジネススクールでは学べない世界最先端の経営学①
本の要約
どのような本か
- 作者: 入山章栄
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2015/11/20
- メディア: 単行本
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ビジネスパーソン全般に,最先端の経営学の知見を届ける本です.
筆者の問題意識として,「最先端の経営学の研究成果が,ビジネススクールに還元されていないこと」があります.
本書籍は,「イノベーション」「グローバル化」「組織学習」「ダイバーシティ」「競争戦略」「リーダーシップ」「CSR」「女性の企業参加」「同族経営」 という身近なテーマについて,最先端の経営学の知見を紹介します.
なぜ最先端の経営学の知見はビジネススクールで学べないのか
経営学の知見を,直接経営の現実・実務に活かすのは難しいです.なぜなら,経営学の論文は,専門的で,小難しい統計分析を使用しているからです.したがって,経営学の知見を経営の現実・実務で活用するためには,知見を活用しやすいように整理すること(「ツール化」)が必要と考えられます.例えば,マイケル・ポーターのファイブ・フォース分析はツール化の一例です.
しかし,経営学者は,一般にこのツール化には熱心ではありません.なぜなら,ツール化は研究業績にはならないからです.経営学研究の世界で重視されるのは,「厳密さ」と「新しさ」です.さらに,「役に立つこと」を三立させることには,あまり興味が向けられないという現状があるようです.
つまり,ツール化が必要であるにも関わらず,それを担当する立場の人がないことが現状の問題点です.そこで,本書籍は,ツール化に対応した役割を果たします.すなわち,最先端の経営学の知見をわかりやすく整理し,読者に紹介します.
所感
「ツール化」の役割は,工学系の研究における「応用研究」「実用化研究」と近いのではないでしょうか.工学系研究では,理学系研究で発見された新しい知識を,「役に立つ」ように発展させることに価値を認め,評価する仕組みがあります.今後の経営学研究も,基礎と応用の分野に分割されて,それぞれに貢献を認めるようになるのではないでしょうか.
また,経営学研究の統計分析手法についても興味が湧きました.経営学研究の流れは,「ダイバーシティー経営は本当に有効か」「CSR活動は本当に企業にプラスなのか」といった問いに対し,仮説を立て,それが真理法則かどうか,統計分析する,というものであるそうです.しかし,相関分析のような単純な統計分析では,「相関」と「因果」は見分けられないはずです.例えば,ある企業は,「ダイバーシティー経営をしたから,業績が改善した」のか,「業績が改善したため,ダイバーシティー経営に手を出す余裕が生まれた」のかを業績のみから統計的に判断することは,単純には困難であるはずです.一方,統計分野では,統計的因果推論という分野があり,このような課題に対する知見が深まっています.このような知見が経営学の統計分析にも活用されているのか,興味が湧きました.調べて見たいです.
統計的因果推論―回帰分析の新しい枠組み (シリーズ・予測と発見の科学)
- 作者: 宮川雅巳
- 出版社/メーカー: 朝倉書店
- 発売日: 2004/04
- メディア: 単行本
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今後このブログでは,この本の各章について,簡単な書評を書いていこうと思います.