社員の多様化により企業の福利厚生は縮小する
日本企業において,社員の多様化は今後も進むだろう
社員の多様性の重要性が強調されるのをよく目にする.
実際に社員の多様性は大切なのだろうと思うし,これから各企業で,社員の多様化は進みこそすれ,後退することはないだろう.
今回は,社員の多様化が進んだ場合に生じる,企業の福利厚生の変化について考えてみたい.
社員の多様化で,福利厚生のコストは上昇する
単純な例として,状態Aと状態Bを比較してみる.
- 状態A:社員のほとんどが日本人男性,正規社員.ある程度の年齢以上はほとんどが既婚,配偶者は専業主婦.
- 状態B:従業員の性別国籍は多様,非正規・正規社員が同程度の割合.既婚・未婚は年齢によらずバラバラ,配偶者がいる場合,その職業は多様.
状態Bの方が,多様な福利厚生のパターンを用意しなければならず,福利厚生の運用コストが増大する.
例えば社員向け生命保険を考える.
状態Aに比べ,状態Bでは,健康リスク,いざという時に必要な補償額,必要な加入期間は,社員の家族構成や転職予定などによって大きくことなる.
そのため,多数の保険商品パターンを用意・運用する必要がある.
(そうしなければ,有利/不利な人が生じてしまう.)
多様な保険商品を運用するには,それだけの運用コストがかかる.
社員の多様化で,福利厚生の旨味がなくなるかもしれない.
社員向けの保険など,福利厚生としての金融商品を運用する旨味の1つは,
社員からある程度の固定顧客数が期待できる->商品を宣伝するコストが削減できる->金融商品の品質が向上する
という点だ.
このコスト面での旨味は,今後,上述の社員の多様化によるコスト上昇により打ち消され,市中の金融商品に対する競争力がなくなってしまうかもしれない.
金融商品の他に,
生活スタイルの多様化->保養所を利用する社員は一部->運用コストがペイできない
などのパターンも考えられる.
企業内の福利厚生ではなく,市中サービスを利用するのが主流になる
以上のように,1つの企業が多様な社員向けのサービスを運用するのはコストの面で今後不利になる.
今後,個々人の状況に最適なサービスを享受するために,社員一人一人が外部の企業と契約することが主流になる.
当然,個々人がサービスを選択するには,選択コストがかかるため,そのために福利厚生サービスの紹介業(例えば生命保険の口コミサイトなど)が今よりも栄えるかもしれない.
これまでの福利厚生サービスは縮小され,その分賃金に上乗せされるべきだと考えている.
企業は,福利厚生の縮小に向けた準備を開始する方がよいと考えている.