うつ病の原因を統計的に示すことはできるか
うつ病を発症する原因は
うつ病を発症する原因について,科学的なことはわかっていません[1].
しかし,いくつかの原因が推測されています.
- ストレス (精神的,化学的ストレスなど)[2,3]
- 性格・気質(責任感が強い,など) [4,5]
- 日照時間 [6,7]
- 所得の高さ [8]
ストレスや性格・気質については,想像通りだと思います.
一方,日照時間や所得の高さについては,私は本当かどうか,疑問に思いました.
今回のブログでは,日照時間,所得の高さが原因であると示せる様なデータがあるか,探すことにしました.
国別の日照時間とうつ発症率の相関
国別の日照時間のデータはすぐには得られなかったため,緯度を代わりに使用しました.
緯度が高い地域の方が年間の日照時間差が大きいため,日照時間の短さとうつの発症率の関係を調べられると考えたためです.
国別のうつ発症率のデータは[9],国別の緯度のデータ[10]はに掲載されています.
緯度の絶対値(北緯30度,南緯30度とも30度に変換)とうつ病発症率の散布図は下記の通りになりました.
地域別にプロットします.
アフリカ
アメリカ
中東
ヨーロッパ
東南アジア
西太平洋
全世界での相関は0.5程度で,検定の結果有位差があることがわかりました.
つまり,日照時間が短い季節のある地域では,うつ病発症率が高いことがわかりました.
ただし,緯度が高い地域でうつ病発症率が高い原因には,日照時間の他に気温や気候の影響も十分に考えられます.
所得の高さとうつ病発症率の関係
所得の高さとうつ病発症率の関係についても,簡単に調べてみました.
WHOの統計[9]から,グラフを掲載します.
上の図で,アフリカ,ヨーロッパ,アジアなどの地域別のうつ病発症率を比較すると,2%程度の差はあるものの,先進国・途上国による傾向の差はなさそうです.
むしろ性別による発症率の差の方が大きいことがわかります.
この図を見る限りでは,所得によるうつ病発症率の変化はなさそうです.
結論
今回やってみて,うつ病の発生要因を統計的(疫学的)に示すことの難しさを初めて感じました.
検証した要因(日照時間,所得)以外の要因の影響を排除したデータを作るのが難しいです.
一方で,緯度の高い地域で有位にうつ病発症率が高いことが示せたのは面白かったです.
引用
[1] http://www.jhsf.or.jp/seminar/2014/20141204_1.pdf
[2] http://www.cocoro-h.jp/untreated/overview/etiology.html
[3] http://www.kenryouin-group.com/utu-cause.html
[4] http://www.dr-maedaclinic.jp/da0302.html
[5] http://diamond.jp/articles/-/5540
[6] https://style.nikkei.com/article/GXMZO81016270X11C14A2000000?channel=DF260120166530&style=1
[7] http://www.fuanclinic.com/byouki/pump226.htm
[8] https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q11122039351
[9] http://apps.who.int/iris/bitstream/10665/254610/1/WHO-MSD-MER-2017.2-eng.pdf
[10] https://developers.google.com/public-data/docs/canonical/countries_csv